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記事を書くより恥をかけ。共感を得るコンテンツの方程式とは? プレスラボ カツセマサヒコ氏

 

Webマーケティング総合サイト『ferret』と、総合転職情報サイト『マイナビ転職』が協同で立ち上げた、未来の若手マーケターを応援するサイト「Marketer’s Story(マーケターズ ストーリー)」。

第9回目は、Web系編集プロダクション「プレスラボ」で、企画立案や編集、執筆を行っているカツセマサヒコ氏にご登場いただきました。カツセ氏の独特なコンテンツは多くのユーザーの共感を獲得していますが、今回はその裏側に迫りました。

書くだけで楽しかった。仕事をしながら「書くこと」を学んだ時期

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◆ferret プレスラボに入社してから、今のような仕事を始められたというわけですが、どんな風に仕事をしてきましたか?

◆カツセマサヒコ氏(以下カツセ氏) 入社前から個人でブログを書いてはいたんですが、ライターとしては全くの未経験だったので、最初はほぼ無記名の原稿が多かったです。女性向けのメディアで800文字くらいのものを月に4〜5本書くこともあれば、FXや不動産投資をテーマにした原稿を15〜20本ぐらい執筆・編集するときもありました。

そのほかに、当時は『下北沢経済新聞』というメディアをプレスラボで運営していたので、その取材、撮影、ライティングなどをやっていました。

1年目の後半になると、Facebookページの運用やTwitterアカウントの運用も担当していました。それに加えて、個人のTwitterアカウント(@katsuse_m)のフォロワーが1万人を超えた頃ということもあり、僕個人に拡散を含めた仕事の依頼をいただくことも徐々に増えていきました。

◆ferret 書くということは、どうやって学んでいったのですか?

◆カツセ氏 プレスラボは書いたものをいろいろな人にチェックしてもらえる組織なんです。納期が許される範囲で何度でも人に聞いていました。とくに最初の1年は2、3人にチェックしてもらって直されてという感じでした。

うちは勉強嫌いの集まりなので(笑)、オールOJTでやりながら学ぶという形です。できる範囲の仕事から始めて、徐々にその幅を広げていく。

たくさん書くと、編集もうまくなるんですよ。他の人の原稿を見て、どうやったらおもしろくなるかというのを考えるようになるし。また、たくさん編集すると、記事を客観視する力が付くから、書くほうもうまくなる。両方がシナジーするんです。 

わかりやすいものを書く。じゃないと理解されない。

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◆ferret プレスラボ入社後、書くことが楽しかったということですが、辛かったことなどはありますか?

◆カツセ氏 楽しいことがやりたくて入社したので、特に辛いことはありませんでしたね。ただ、FXとか不動産投資をテーマに扱うと、学ばなければいけないことはたくさんありました。

取材して記事を書く場合でも、それらを噛み砕いて形にするまでとても時間がかかって。今でも苦手なんですけど……。

そういう仕事が重なった時期は、睡眠時間がどんどん短くなって、クリエイティビティが低くなっていくのを感じていました。そのとき気づいたんですね、「俺、頭悪いからもうちょっとうまくやらなければいけない」と。

そこから、簡単に言えば、苦手なことを底上げするのではなく、得意なところを伸ばす方法で仕事をしたほうが向いていると気づいたんです。

会社自体も、苦手意識があるものを無理にやる必要はない、得意なものを伸ばしていくべきという雰囲気があったので、徐々に自分の顔を出していくような今のようなスタイルになっていきました。

◆ferret 当時、FXや不動産投資といった堅いテーマの仕事もあったわけですよね。それをやりながらという感じですか?

◆カツセ氏 あるにはありましたが、1年を過ぎたあたりから後輩にそういう仕事を任せられたり、仕事が突然終わったりして、自然とやりたいことができる環境が整っていったんです。マイナビさんが運営していたケコーンが始まったのも、この時期でした。

あと、個人ブログではさんざんネタっぽいことをやっていたので、「そういうことが好きなんだ」という認知が社内外に取れていったというのもありますね。

◆ferret たとえば、どんな記事ですか?

◆カツセ氏 2015年の2月に「バレンタイン大作戦」という記事を書いたんです。社内に「チョコ置き場」っていう箱を置いて、誰も入れてくれるわけないのに、ひたすら1日箱を観察するという、くだらない記事です(笑)。

でもそれが身内中心にTwitterで拡散されて。おもしろいねって言ってくれる人や、アホだと笑ってくれる人がいたんです。

会社でも、当時6、7人しかいないのにそんなことをやっていたら、カツセはそういうアホなことが好きなんだという感じになって、いろいろな企画をもらえたのかなという気もします。

◆ferret お話を聞くだけで、絵が浮かびますね(笑)。

◆カツセ氏 僕、わかりやすいものじゃないと理解できないんですよ(笑)。でもそれは読者も一緒かなって思うので、難しい内容の取材であっても、できるだけわかりやすく書くことが大前提にあるような気がします。

「いいね!」ひとつでやりとりが済んだり、スタンプで返事をしたりする非言語コミュニケーションが主流になっている世の中で、読み手の読解力やリテラシーが下がっていくことを危惧する声も聞きますが、僕はそれはある程度しょうがない流れだと思っています。

むしろプロであるなら、時代の流れに合わせて、書き手が変わっていかなければならないはずだし、読み手が苦痛にならないように配慮しながら、多くの人に届くように書くべきだと思います。

カツセ流コンテンツ制作のキモは「逆張り」「深掘り」「あるある」「エモさ」

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◆ferret カツセさん的に、コンテンツの作り方で気をつけている部分などはありますか?

◆カツセ氏 まずは、企画ありきですね。僕自身、職人ライターではないので、どんな取材をしてもわかりやすく・おもしろくできるわけではないと思うんです。読みやすいようには努力しますが、全部が全部、多くの人に届けられる自信はないんですよ。

だから僕が勝負できるのは、こっすい企画力(笑)と、フックなのかなと常々思っていて。

企画のときに意識するのは、まず時事ネタですね。できるだけ速報性を意識して動くというところと、逆張りという部分。おもしろいネタがあっても、ほかのメディアと同じ路線で書いても反応は薄いから、ネガティブなネタでも、どうしたらポジティブにできるかというように考えて動くようにしています。昨年の年初にケコーンで出した「LINE晒し」をテーマにした記事は代表例ですね。

もうひとつは、一度バズったものに対して深掘りしていくというもの。既に過去にバズったネタであっても、切り口や目線を変えればさらにおもしろくなるのではというのを、常に意識しています。同じくケコーンで女優の安達祐実さんの旦那様を取材した記事は、まさにこれがハマった形でした。

現状、テレビでもWebでも、一度トレンドになったものをどう料理するかというところが、企画のおもしろさなのかなと思っているところはあります。

あとは、「あるある!」と感じるものを見つけることかなと思っていて。みんながよくやっていることなんだけど、実はまだ気づかれていないものを世に出してあげる。「当たり前だけど、実はおもしろい」っていうところを見つけられれば、バズりやすいかなと思っています。

加えて、エモくさせること。誰でも原体験や同世代での共通認識のようなものがあるので。誰かと共感できるエモい部分をできるだけ探してきて、入れてあげればいいのかなと。

「街角のクリエイティブ」っていうメディアで書いた「男女のすれ違い」を実際に取材しながら紐解いた記事なんかは、誰もが学生時代に通り過ぎたことを描写するようにしました。

バズるための方程式はきっといくつもあって。でもみんなそれができない。当てはめてもバズらないこともたくさんあります。僕も打率めちゃくちゃ低いので。だから結局、いろいろ経験して身についたものでやっていくしかないと思っているので、僕は今のところ、いま挙げたようなものでこれからも勝負していくのかなと思います。

◆ferret 世に出したコンテンツは、どのようにウォッチされていますか?

◆カツセ氏 基本的には、TwitterのRT数をメインに考えています。僕の書く記事はTwitterとFacebookのシェア数が比例するケースが多くて、TwitterがバズったらFacebookもバズる感覚があります。

とくにTwitterはフォロワーも多く主戦場なので、よく見てますね。アナリティクスずっと見ていたり、シェアの仕方も、同じ記事をほぼ同時間帯に切り口を変えて投稿したりしていて。

Webと紙の違いは、書いた記事を届ける努力も書き手がしなければいけないところで。記事の存在自体をアピールしてあげるのも仕事だと思っているから、感想がよかったものはどんどんRTをしてます。「しつこい!」ってぐらいRTしてフォロワーが減ることも多々あります(笑)。

フォロワーも多いので、Twitterならば100RTは当たり前にいってほしいと思っています。500RTを超えたくらいからフォロワー外に届き始める感覚があって、これでPV的には2万後半から3万という感覚。常に、5万PVに届かせるにはどうしたらいいのか考えるようにしています。

たとえば、同じ業界の方々がシェアしてくれると、これはちゃんと刺さっているな、自分のターゲット外のところまで伸びているという感覚があります。水面に水滴が落ちて波紋が広がっていく感覚。「この人まで届いたら、結構拡散されている」という指標にする人は持つようにしていますね。

人の心を動かすためには「嘘をつかない」こと

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◆ferret 人の心を動かすコンテンツを作る、そして届けるためにはどういうことが必要だとお考えですか?

◆カツセ氏 上手な表現よりも、もはや言語がいらないくらいパッションが出ているほうが僕は刺さると思っていて。「うわ! めっちゃ最高!」とかでもいいと思っているんですよ(笑)。心の震えみたいなもので書いたほうが、伝わることが多い気がしていて。言葉にならないものはそのまま書いてあげる。

もうひとつは、臨場感。デートプランの記事だったら、隣にいつも理想の女性がいると思ってその場所を歩いてます。実際は一人とか、男性と一緒なんですが(笑)。できるだけ読者に「理想の人」をイメージさせたいという気持ちがあるから、一緒に歩いているのがガッキーでも長澤まさみでも石原さとみでも変換できるように書いています。

◆ferret 思考の余白が人を動かすんですね。

◆カツセ氏 そうだと思います。イメージさせてあげるというのは小説も一緒だと思っていて。全部は見せすぎないというのが、ネタ記事を作るときは大事なのかなという気はします。

あとは当たり前なんですけど、“みんな”じゃなくて“一人ひとり”に届けているつもりで書いています。

◆ferret マーケティングの世界ではターゲットとペルソナというのは違うものですが、カツセさんのなかでは、どれくらいの粒度で“一人ひとり”をイメージしているのでしょうか。

◆カツセ氏 ペルソナ設定をするときもありますが、僕がペルソナを設定すると「そんなやついない」となるケースもあるので(笑)。

たとえば僕のTwitterのフォロワーが75,000人いたら、そのうちアクティブユーザーが20,000人とします。その20,000人の大半が女子で、大学生で、〇〇あたりに住んでいたとしたら、失恋したときは、クリープハイプ聞くだろうなあみたいな、そうやってターゲットを設定することが多いので、基本はフォロワーから粒度を細かくしていく作業をしている気はしますね。

◆ferret ペルソナ設定は、クライアントに説明するためのものですよね。

◆カツセ氏 それはすごく思います。僕はフォロワーの拡散を求められることが多いので、ペルソナについてはあまり言及せず、「僕のフォロワーはこういう人が多いです」といった説明をすることが最近は多いです。もしくは、こういう記事なら刺さるんじゃないですか、とも言ったりします。

記事を書くな、恥をかけ。失敗が成功を生む。

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◆ferret コンテンツを作る仕事に憧れている人はたくさんいると思うんですが、そういう人にメッセージがあればお願いします。

◆カツセ氏 僕もまだまだ現役で頑張っている身なのであまり上からは言えないんですけど、「記事を書く」というよりは「恥をかく」つもりでスタートしたほうがいいと思います。

自分が書いたものや自分のサイトがけなされるのは怖くもあるけれど、作ったなら恥をかいてでもいいから見せて、いろいろな声をもらってメディアを育てていくほうが健全だし、存在感が出るんですよね。

今はSNSのおかげで騒げば騒ぐほど存在感が出るようにできているんです。「あいつ最近ずっとあのメディアの話してるな」ってなれば、そのメディアと自分のひも付きが強くなって存在感が出てくる。そうすると、良くも悪くも目立つようになると思うんです。

僕がケコーンの編集を担当していたとき、自分が書いていない記事でも拡散し続けていたのは、ケコーンというメディアをみんなに知ってもらいたかったからだし、それで出ている記事がたとえまだそんなに評価されるものではなかったとしても、届ける努力をあきらめずに続けていくことがすごく大事だなと思ったからなんです。

だから記事コンテンツを作るのも、メディア運営をするのも、ちゃんとその記事や媒体を好きになって、「好きだ、好きだ」と恥かいて騒ぐことが大事だなと思っています。

◆ferret 続けることが難しいと思うのですが?

◆カツセ氏 成功体験を1回でもすればいいと思います。僕はプレスラボに入社するまでずっとブログを書いていたんですが、それはこの業界に入りたくて書いていたんです。どうしたらWebライターになれるんだろうと思ったたとき、声がかかるのを待つしかないと思ってブログを延々と書いていました。

でもずっと20PVくらいだったので、やる意味あるのかよと思っていたんですけど、それしかやることなかったんですよね。どうしたらバズるのか、いろいろなテイストを試していくことが大事だし、トライ&エラーを続けていけばいずれは……っていう。あまり夢がありませんけど(笑)。

それでも、当時のブログを3人くらいがいつも楽しいって言ってくれていて。その人たちを増やしていけばいいんだという感覚になれたから書けていたんですよ。

ブロガーっぽい感覚ですけど、それはメディア運営も多分一緒だと思うんです。社内でもいいですし、どこかで見てくれる人がいて、いつも楽しみにしてくれていると思えば、書かなければいけないと思うし、ちゃんと数字とれるようにしなきゃって思いますよね。

そうして初めて、「やらなければ」という気持ちが「やりたい」にシフトしていけると思うので、そこまではがんばってほしいと思います。

肩書きとしての「カツセマサヒコ」


◆ferret 10年後、カツセマサヒコというブランドはどうなっているイメージがありますか?

◆カツセ氏 ブランドなんて大袈裟なものじゃないんですけど(笑)、「言葉」から派生するものは、垣根なく仕事にしていたいなという気持ちと、そうしているんだろうなというイメージがあります。

それは、しゃべることもそうだし、コピーライティングも脚本もなんでも。取材に行って書く記事もあれば、エッセイやコラムもあるし、世の中には言葉を使う仕事がたくさんあるので、そういうものを横断して活躍するポジションになっていたいなという気持ちがあります。

「ライター・編集者」という肩書きを越えて、「カツセマサヒコ」という名前で勝負できたらなと思いながら仕事をしています。タレント性みたいなもので売っていくことは覚悟がいりますし、消耗戦から早く脱する方法を常に考えなければいけないけれど、これまでの経験を活かしてやっていければと思っています。

 

Marketer’s Story Interviewee

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株式会社プレスラボ カツセマサヒコ

1986年生まれ。東京都出身。大学卒業後、大手印刷会社の総務部にて5年間勤務したのち、プレスラボに転職。幅広いジャンルのメディアでの取材・執筆・編集経験と、オウンドメディアやSNSアカウントの運用経験を持つ。現在はTwitterのフォロワー数が75,000人を超え、その大多数の割合を占める10代20代女性をターゲットとした取材記事、エッセイ、コラム連載の企画・取材・執筆等をメインに受け持つ。書籍では『SNSポリスのSNS入門』(ダイヤモンド社)のコラムページの執筆も担当した。

株式会社プレスラボ http://www.p-labo.biz/


次回、 Marketer’s Story 第10回目は、NPO法人グリーンズの植原正太郎様に登場いただきます。お楽しみに!

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