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「マーケティングとはストーリーを語ること」ロジックと数値と心を動かすマーケター freee株式会社 岡田悠氏

Webマーケティング総合サイト『ferret(フェレット)』と、総合転職情報サイト『マイナビ転職』が協同で立ち上げた、未来の若手マーケターを応援するサイト「Marketer’s Story 」。

こちらでは、現在『成長する企業で』『注目を集めるサービス(プロジェクト)で』躍動するマーケターにインタビューを行ってまいります。活躍するマーケターの業務内容や取り組み、普段垣間見えないパーソナルな部分を”生の声”としてユーザーに届けることで素顔に迫ります。

第4回目は、有効事業者数が60万を突破し、クラウド会計ソフト/クラウド給与計算ソフトで"シェアNo.1"に君臨するfreee株式会社(以下、freee)の経営企画 法人事業戦略 岡田悠氏にインタビューを実施。

”バックオフィス最適化“を掲げるfreeeが、如何にして80万時間という経理/労務業務のムダを削減できたのか。マーケティングの中心的な存在・岡田氏に、自らの経歴のほか、業務内容とそれを実現させる上で注力したポイントについて話を伺いました。(数値はいずれも2016年3月時点)

もともとは自身がfreeeのユーザーだった。紆余曲折のキャリアとは

 

◆ferret編集部 (以下、ferret)  まず岡田さんのこれまでの経歴をお聞かせください。

◆freee株式会社 岡田悠氏 (以下、岡田氏)  一橋大学卒業後、証券会社に入社し、投資銀行部門でM&Aや資金調達などのアドバイザリー業務を担当していました。その後、1年ほど実家の事業を手伝い、2014年6月にfreee株式会社に入社しました。入社してから2年半程マーケティング部に所属し、今年10月からは現在の経営企画 法人事業戦略に異動となりました。
 

◆ferret 証券会社からソフトウェア会社のマーケターへの転職。異業種への転職でしたが、その点についてはいかがでしょうか。

◆岡田氏 前職を辞めた理由はシンプルで、「もっとクライアントを身近で感じられる業務に就きたい」という思いからでした。この想いは社会人になって様々なことを経験するうちに増していきました。

◆ferret その後、freeeと出会ったわけですね。きっかけは何だったのでしょうか。

◆岡田氏 証券会社を退職した後、1年ほど実家(自営)の手伝いをしていました。その際、「業務時間の短縮」「会計管理の見直し」を図るという観点から見つけたのがfreeeの会計ソフトでした。これが私とfreeeの最初の接点です。その際、プロダクト自体に強い魅力を感じました。ソフトウェアの機能と使いやすさに物凄く感銘を受けたのを今でも鮮明に覚えています。

実際に「このソフトはどういう会社が作っているのだろう」と気になってfreeeの企業サイト等を見ていました。そこで事業内容に興味を持ち、採用募集していることを知って応募するにいたりました。

◆ferret 実際に入社してみていかがでしたでしょうか。

◆岡田氏 会社の雰囲気、業務内容、やりがい、どれをとっても満足してます。入社前に抱いていたものと相違のない感じです。特に入社して改めて感じたのは社員が会社のミッションのために業務を行っている点です。

freeeのミッションは「誰もが創造的な活動ができる社会」「スモールビジネスが強く、かっこよく活躍する社会」を実現することです。中小企業のビジネスが、本来注力すべき業務にきちんと向き合えるように"業務のムダを改善"していく役割こそ、freeeがユーザーから期待されている点になります。

普段から私も採用に携わる機会が多く、面談に来る人がミッションに共感できるかどうかというのは最重要項目の一つとしてみています。仮に、人柄・知識・スキルが私たちのニーズにマッチしている場合でも、freeeのミッションに共感できる如何では採用に至らないというケースも実際にあります。

様々なバックグラウンドを持つ仲間がミッションを通じて一つになっている点が、業務をより効率よくさせる要素だと思ってます。だからこそfreeeではこのミッションを大切にしています。

マーケ、セールス、開発。コミュニケーションの根底には会社の価値基準が

◆ferret 続いて、9月まで就かれていたマーケティング部の業務内容を教えてください。

◆岡田氏 マーケティング部の業務範囲は極めて広域で、BtoB的な性格もBtoC的な性格もあります。例えば、ユーザーとの最初の接点においては広告運用やSEO、メディア運営などのWebマーケティングに加え、CMなどのオフライン施策も実施しています。

これらの内容を、マーケティングオートメーションツールを活用し、ユーザーに対して、カスタマイズされたコミュニケーションを実施すること。さらに購入いただいた後もずっと利用してもらえるように継続率を上げるような施策も含め、それらを企画・実行することがマーケティング部の役割です。

つまりまず第1段階として、様々なチャネルを通じて"freeeがどのような課題をクリアできるのか"を訴求してユーザーと接点を持ちます。続いて、実際に触れてもらい、メリットを体感してもらうことで継続的に利用いただく、というのが全体のイメージです。

ただ、こうした流れの後半部分は売上につながるセールスフェーズでもあるので、マーケティング部だけでは完結できません。そこで、日頃からセールスチームと密に連携を図って動いています。ここが重要な部分でもあります。さらにセールスチーム以外にもエンジニア(開発)チームとも一緒に情報共有して機能向上・改善等にもつなげていく必要があります。そうした関係各所との上手なコミュニケーションもマーケターには求められます。

◆ferret 過去に業務上、今に生かされている失敗などはありますでしょうか。

◆岡田氏 日頃から決められた期限内に、限られたリソースの中で業務を遂行しています。そのため、「今、何を優先すべきか」というのを常に意識しなければならないのですが、つい忙しさから周りが見えなくなってしまうことがありました。特にGoogleアドワーズの数値やマーケティングオートメーションツールで管理する数字、予算……など、"数字"が気になってしまい、余計後手に回ってしまうことも。

具体的には、技術的に難しいと思っていたサイト改善があったとします。それに関してマーケでどう対応できるか議論していましたが、すぐに結論は出ませんでした。

でもより広い目線で考えれば、freeeには優秀なエンジニアが大勢います。問題をチーム内だけで背負い込まず、まず会社全体としてその問題をどう解決できるのかを考えるべきでした。

こうした時に周りの先輩などによく言われたのが「リソースの制限がないとしたら、どういう策を講じるのか考えなさい」という見方です。普段から細かいことばかり意識していると頭の中も凝り固まってしまうので、そうした発想を意識することで、アイデアの幅が広げることができます。まさに、その発想があれば防ぐことが可能な事象でした。

「リソースも技術もない。だからこれぐらいしかできない」とネガティブな思考にとらわれてしまわぬように、一旦、あらゆる制限を取っ払って考える大切さを常に持つように心がけています。

◆ferret freeeにはユニークな会社の価値基準があると伺いましたが、そのあたりについて教えていただけますか。

◆岡田氏 『本質的(マジ)で価値ある』『理想ドリブン』『アウトプット→思考』『Hack Everything』『あえて、共有する』の全部で5つです。これらは『強く、そして意思決定の早い組織であるために、freeeらしい行動や価値判断を行うための要素』として存在しています。社員全員に浸透していますよ。

▲freee株式会社の「価値基準」(コーポレートサイトより引用)

例えば、「マジ価値(本質的で価値ある)」は、常に会話の中でよく使われています。「これはマジカチですか?」というように出てきますね。そのほかにも「アエキョーですけど(あえて、共有する)」というのもよく使われてますね。これら全てが普段の社員同士のコミュニケーションで出ますし、このように共通した理念・言語が普段の会話から出てくる点も仲間意識をつくる良いエッセンスなのかもしれないです。

私の入社当時のように30人程度の組織であれば"阿吽の呼吸"で連携を図れますが、さすがに100人を越えるとそうはいかなくなります。全てを把握できなくなり、極端な話、あまりコミュニケーションを図らないメンバーまででてきてしまうかもしれません。その結果、貴重な情報がどこかに偏在してしまうので、そういう時に情報を全部吐き出して共有できる環境や雰囲気があることは大事だと思います。

マーケティングは“ストーリーを語る”こと。目指すは人の心にささるようなストーリーを、数字のロジックや経験から語れるマーケター

◆ferret  業務を通じたやりがいというのは、どういった部分で感じますか。

◆岡田氏 社内で給与計算について勉強していたのですが、給与事務に関してはWebサイトに詳しくまとめられた記事コンテンツというのが見当たりませんでした。書籍に関しては、多少あったものの『これ!』というものを見つけられませんでした。

そこで「同じことで課題を抱えている人がいるのでは」という思いから、自分で調べて学んだ内容をブログで書いていくことにしました。そうしたら、まさに多くのユーザーから反響をいただき、同じような悩みを抱えている方が存在することがわかりました。

その後、次第にコンテンツ量も多くなり、結果的にはユーザーに対して定期的に情報を訴求する、一つのメディアのような形式になっていきました。記事だけではなく、そこにeBookを複数制作してダウンロードできるようにしたのですが、それに関しても多くの反響がありました。すごくやりがいを感じました。

ユーザーの役に立てているのを体感できましたし、そこにユーザーの期待というのも感じました。もちろん会社の業績にも貢献できているという達成感も得られました。

そのほかにも、「仮説が当たった・外れた」というのもそうですが、アクセス解析等の「数値の変化」や実際に「ユーザーが反応した」というのを通じて日々のやりがいを感じています。

◆ferret  岡田さんの将来のビジョンをお聞かせください。

◆岡田氏  私自身、大前提としてfreeeのプロダクトが大好きなんです。私もかつては一人のユーザーでしたし、プロダクトが物凄く良いことはわかっているので、それを世の中にどのようにして届けるかが私のミッションだと思っています。だからこそ目先の目標は、「freeeをより広げていく」ことに注力していきたいです。

現在は、経営企画 法人事業戦略という新たな部署にいます。その中で、いくつかのミッションに向き合っています。例えば給与ソフトでいえば、マーケティングフェーズだけではなく、それを"どう売るのか"というセールスフェーズもそうですし、"どう開発をするのか"というのも含めて横断的に全体の施策を企画・管理しています。これまでのように実際に自分が分析だとかを行うことは少なくなってきているのですが、マーケティング部での経験があってこそ、より実践的なアイデアや企画を考えられていると思っています。あと今までよりもプロダクトに絡んでいけるので楽しいです。

今のfreeeは、IT業界の方、クラウドに関心のある方、いわゆるアーリーアダプターには浸透していますが、まだまだマジョリティ層の方には伝えたい情報を届けられていない状態です。つまりは、もっとサービス認知度を高められると思ってますし、freeeで解決できる課題を抱えているユーザー(企業・個人)の方がまだ多くいます。地方やNPO法人の方など、経理/労務に関連した業務で課題を抱えている方にもっとfreeeを知ってもらえるように裾野を広げていきたいです。また最近銀行と共同でfreeeを活用した融資審査サービスが始まりましたが、そのような新たなサービスにもチャレンジしていきたいです

◆ferret それでは最後の質問です。岡田さんにとって「マーケティング」とは何でしょうか。

◆岡田氏 マーケティングは、どうやって、何を、誰に伝えるのかという視点をおさえつつ、「ストーリーを語ること」だと思っています。それはセールスもマーケティングも一緒だという認識ですし、投資家にどう語るのかでストーリーに価値が付いて株価に影響を与えるという部分では前職と通ずる部分だと思います。

最近よく思うことがあります。「北風と太陽」「うさぎとかめ」「アリとキリギリス」のイソップ童話の作者イソップのすごさですね。3,000年以上も語り継がれるぐらいというのを考えるだけでもその偉大さがわかりますが、その話の巧みさで人生を切り開いていったイソップのその話術というのは計り知れないものを感じます。

私ももっとユーザーのために、人の心に残るストーリーを数字のロジックや経験から語れるマーケターになりたいです。これからも多くを学び、経験して、そのイメージに一歩でも近づきたいです。

Marketer’s Story Interviewee

freee株式会社 経営企画 法人事業戦略

岡田 悠 氏(おかだ・ゆう)

一橋大学卒業後、外資系投資銀行に入社して投資銀行部門でM&Aのアドバイザリー業務に従事。その後、退職して実家の業務を手伝う際に触ったソフトウェアに強い関心を持ち、そのサービスを提供するfreee株式会社に転職する運びに。freeeではマーケティングをメインとしながらも、事業企画など様々な役割を担う部署に配属され、オンラインを中心としてマーケティング全般に携わる。今年10月から経営企画 法人事業戦略に異動となり、現在は新サービス等の企画・戦略担当を務める。

freee株式会社 https://corp.freee.co.jp/

 

次回、 Marketer’s Story 第5回目は、B.LEAGUE(公益社団法人 ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)事業本部 マーケティング部 北川 峻 様に登場いただきます。次回もお楽しみに!

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ライティング:高野大寿

ライティング:高野大寿

Webマーケティング事業部 ferretディレクター。出版社・編集プロダクションにてスポーツを中心とした雑誌・Web媒体の編集・記者を経験。その後、法人企業向け営業支援会社、Web制作会社等にてWebディレクターを務め、株式会社ベーシック入社。「ユーザに寄り添った情報発信」をモットーに編集・執筆に従事。

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